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Steam日記①: Dream

●前文  雰囲気ゲーが好きでした。

 ハデなアクションや対戦ゲームももちろん好きです。が、必死に手や頭を動かすことなくのんびりと浸れるようなゲームもやりたい。そんな思いでゲーム市場を見回してみると、一般的なハードでは雰囲気の良さを前面に押し出したソフトは中々見つかりません。まあニッチといえばニッチなので当然です。

 ところで、私は半年ほど前まではSteamでゲームを購入したことがありませんでした。L4D2が無料配布されていた時に乞食速報したくらいです。そんな私がつい先日、何の気なしにSteamを開いてみると、ちょうどハロウィーンのセールが開催されているところでした。DTMでいうソフト音源しかり、この手の外国のセールはキチガイじみた割引を行うことがあります。有名タイトルでも例外ではないので、どんなソフトがセールされてるのかなーとランキングを眺めてみると、タグ欄に「雰囲気」とかいうピンポイントな文字が見えました(ジャンル的には「ウォーキングシュミレータ」というものもあるようです)。反射的にクリックすると、なかなかどうして、琴線に触れる良さげな雰囲気ゲーが次から次へと並びます。桃源郷は現世ではなくSteam市場にありました。ランキングを漁りまくって、気になったタイトルを次々にウィッシュリストに追加していきます。どれも平均1000円弱程度、高くても3000円以下です。とはいえ、Steamで金を使うことにまだ若干の抵抗もありましたし、インディーズゲームなんてピンキリです。最初の購入でつまずきたくはありません。色々吟味した結果、せっかくなのでセール中のタイトルを買うことにしました。ウィッシュリストに入れた中で、対象は「Dream」「The Talos Principle」「The Vanishing of Ethan Carter」の3つ。今回は価格も手頃で評価も高い、Dreamを選びました。結論から言うと、大変満足しています。

 

●Dream  このゲームはタイトルの通り、夢が題材です。3D版ゆめにっきといえば大体伝わるかと思います。主人公は広大で、退廃的で、どこか現実的なのに狂気じみた夢の世界を1人さまようことになります。とはいえ、ホラー要素はほとんどありません(往々にして、ディテールにこだわった雰囲気の良さげなゲームは、幽霊だののスクリームを織り交ぜて、私の興味を削いでいくものでした)。ホラーゲームで設けられるところの、いわゆる「恐怖ポイント」のようなものは皆無です。ゆめにっきのように、静かで開放的な不気味さが空間を支配しています。

夢は無意識を自覚できる数少ない場所です。主人公は自身の夢の中で、無遠慮な不安や過去の記憶、あるいは自分自身を、暗喩や皮肉を介しながら目の当たりにすることになります。

●ゲームシステム  このゲームは大きく分けて、「夢」と「現実(悪夢)」の2つのパートに分かれています。夢パートでは広大なドリームワールドを探索し、散在するパズルを解きつつ、隠された意識を呼び覚ましていきます。 一方で現実パートでは、現実世界と同じように見えて、狂気が蠢く自宅の中に囚われることになります。そこにあるのは夢のおかしさや憧憬などではなく、明らかな害意と不快感です。このゲームではっきりとした恐怖を覚えるとしたらこのパートでしょう(あくまで彼らが脅かしにくることはありません。直接手を出してくるゴーストは二流です。ただ、にじり寄ってくるだけです)。

●マップ

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 このゲームの最大の特徴は、精緻に(超美麗グラフィックという意味ではなく)描かれた夢の世界です。主観で見る、日常生活から歯車がズレきった夢の世界は、プレイヤーをその世界観に強く引き込みます。ゲームならではの表現もあり、その非日常性に息を飲む場面が度々ありました。一番歩いていて楽しかったのはエッシャーの階段の家です(この一文だけで興味を惹かれる層は多いことでしょう)。それ以外にも、夜の海上リゾートなど、搦め手でなく単純に美しいマップもあり、どのマップでも何度も立ち止まって風景を眺めたものでした。

●BGM  このゲームの良さを語るとき、BGMは外せないでしょう。時に不安を煽り、時に安らぎを与えてくれる完成度の高いBGMは、マップの雰囲気と相まって、プレイヤーが夢の世界にのめり込むのを手助けしています。

●パズル  ストーリーを進めるためには各ステージ内に設置されたパズルを解いていく必要があります。パズルとしての難易度は、平均すると高いものではありません。3D要素を生かしたパズルもあり、2Dのフリーゲームのパズルに慣れ親しんだ身としては難しく感じる場面もありましたが、解けないと感じるレベルのものはなく、気楽にやって解ける程度のものです。ただ、爽快感はあまりなく、どちらかというとただ面倒なだけのものが多かったように思います。クリアした今でも、パズルを楽しむゲームではないと思っています。

●ストーリー  夢の世界が題材なだけあって、目にする言葉は曖昧で、「こういう背景や事情があって〜」というような確固たるバッググラウンドはほとんど語られません。しかし夢の世界は正直というか、夢の中で目にする情報から推察できることはあります(というか結構わかりやすいです)。 それと今更ですが、このゲームは字幕も含めて全編を通して英語です。 使われている単語や文法は平易なものばかりなので、スマホの辞書アプリ片手に遊べるレベルですが、主人公のつぶやきなどは結構早口だったりするので、リスニングが苦手な人は置いてけぼりを食うかもしれません。ただ読み物の割合が大きいので、そこまで気にするほどでもないでしょう。

●不満点  悪い点を挙げるとするならば、何よりもまずバグの多さです。明らかにパズルのクリアやアイテム取得の条件を満たしていても、それが上手くいかないことが度々あります。どうしてもあるアイテムと実績が取得できずにコミュニティを覗いてみましたが、条件を満たしたのにそれらを取得できないというコメントが多く、現状では取得不可能だと結論づけました。それ以外にも対象にインタラクト(=いわゆる「調べる」)することができなくなったり、それが原因で解いたパズルをリセットせざるを得なくなったり、結構簡単にポリゴンの隙間に挟まって動けなくなったりと、ゲーム進行に支障をきたすバグが少なくない頻度で発生します。オートセーブなうえ1つのパズルにかける時間も長くはないので、リセットのダメージが少ないのは救いです。 操作性の悪さもマイナスポイントです。アイテム選択はやけに時間がかかり、イライラさせられます。何より残念なのは、スティック感度という概念がない(そもそもゲームパッドに対応していませんが)わりに素の歩行速度が速いため、風景を楽しみながら歩くのが難しいところです。どうせさっさと通り過ぎたいときには走るので、歩きの速度を2/3にしてくれたらなあと思わずにはいられません。

●総評  バグでところどころつっかかることはありましたが、それでもその魅力的な世界観と雰囲気は、没頭してぶっ通しでプレイするには十分なものでした。一応要素をコンプしようとして(前述の理由でコンプはできませんでしたが)一通り歩き回ったところで、プレイ時間は20時間程度です。1000円ちょいという値段を考えれば、買って損をするゲームではないと自信を持って言うことができます。雰囲気を楽しみたいけど忙しいのはやりたくない、そんな人にオススメなゲームでした。時間があればもう一度最初からプレイしたいところです。 ところで、このゲームはVRに対応しているようです。特に階段の家なんかはすごく楽しいと思うので、持っている方は是非プレイしてみてはどうでしょうか。

 

 さて、Dreamをクリアして、次にプレイしたのはThe Talos Principleでした。こちらはPCと眼球が悲鳴を上げるほどの超美麗グラフィック、独特な世界観、やりごたえとボリュームのあるパズルが売りで、神ゲー認定してもいいと思っています。そちらもそのうち日記として書く予定です。


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